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第三回 ぐのぐ展テーマ【善作】平成24年 4月28日〜5月6日開催
4月28日(土)〜5月6日(月)「第三回ぐのぐ展」を開催しました。
たくさんのご来場ありがとうございました。
※展示品画像更新しましたのでご覧ください。
道具に対するコメントは松尾さんによるものです。


今回は善作を並べる事にしました。
関西では善作三代についていろいろな所や資料などでよく語られています。
私自身も関西人ですが、それを抜いたとしても、良質な善作という道具鍛冶をもっと見直しても良いのではと思います。
しかし、標記となる刻印は多種多様で一言では納まりません。
そこでとにかく私の手元に有る善作を見て頂き、少しでも皆様の参考に成ればと企画しました。
少数ですが、それぞれに特長の有る物だと思います。
                                                                                          松尾具屑
                             協力指導  山田英次氏
@『初代 善作』     マチ付切り出し 

刻印は砲弾型と言われる物で、外枠の上が四角、下が丸い逆砲弾の枠の中に善作名が入っています。
この切り出しを見て頂くと、やはり良質な道具を、ちゃんとした技術を持って製作していた道具鍛冶である事が
よくわかります。
しかし、残念ながら初代善作の道具を見る事はほとんどありません。
この切り出しの地金は日本鉄、鋼は炭素鋼です。
特に鋼の巻き込みには鋭さが有り、全体の肉まわしにしても無駄のない使うための道具に成っています。
だからこそ名が残ったのだと納得出来る一品です。


A『二代 善作』     玄翁
この玄翁は珍品の部類に入るのかと思います。見ての通り、全鋼の玄翁です。
道具鍛冶はわりといろいろな道具を求められるままに作っていますが、玄翁を上手にこなすのはなかなか難しいようです。
特にヒツ穴は普通の刃物とはまったく異なる技術が必要で、手を出す道具鍛冶も少なく、
よしんば取りかかっても非常に手間がかかってしまいます。
その点、善作はけっこう色々な物を作っています。
その中で二代善作のそれは使い勝手の良い名品と成っている場合が多いように思います。

B『三代 善作』     鉋
C『三代 善作』     釘〆
 この鉋には三代善作がよく使った刻印が入っています。
三代善作については比較的現存数が有る様に思われます。
また、この釘〆もそうなんですが善作三代に共通する事は基本的に使用する道具に徹している事だと思います。
確かに杏出しの派手な鑿も存在しています。
しかし使う事を拒否している様な道具は一つも有りません。
使う為の道具こそが善作の真髄であり三代続いた勝因にも成っていたと思います。

 
 D『三代 善作』     広ノミ
 このノミの場合は他の善作のノミと突き合わせて、ようやく三代善作であろうという結論にたどり着きました。
それというのも、このノミに打たれた刻印が問題だったのです。
この広ノミに打たれた善作の刻印が他に例が無いため確認が出来なかったのです。
そのため本物の善作のノミを見、実際に何本もならべてつき合わせ、肩や首、地金などの特長を検証しながらようやく結論付けました。
この様に本物と見比べる事が鑑定の大きな手がかりと成ります。
本物を見る事の大切さが身に染みました。

E『登録商標 善作』  鉋
 この鉋は登録商標の付いた善作です。登録付きの善作は、一般的に「初代、二代、三代」では無い)という事に成っています。
しかし、この鉋は作りが通常よりも鋼の丈が長い大阪型で作られ、時代も昭和初期から以前は有るのではと思います。
関東では問屋に銘を登録されてしまった道具鍛冶は銘に「左」を付けたり裏返したり大変だった様ですが、
善作はそのままなのです。
大阪ではこの様に本物と登録善作が並んで売られていたのではないかと思われます。
そして登録善作はもしかすると現在でも作られているのかもしれません。


あとがき
善作に関しては、これら以外にもいくつかの銘があります。
残念ながら資料不足でそれらの全てを整理して展示する事は出来ませんでした。
ただ、今回を機に善作の研究が一段と進められればと思います。   
                                         松尾 具屑